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政府・与党は建設業の人材不足が深刻になっている点を踏まえ、公共工事の入札制度を見直す。価格の安さを追求する姿勢を改め、若手の技術者を活用する企業を優遇する点数制を導入する。熟練労働者との組み合わせでノウハウを引き継ぐ工事も奨励する。復興や防災、古いインフラの更新や東京五輪の施設整備など高水準の工事が続く見通しもあり、次代を担う人材の育成を急ぐ。
新制度は工事の計画作りを民間に任せる方式なども含めて、2014年にも導入する。自民党の議員連盟「公共工事契約適正化委員会」(野田毅委員長)は「公共工事品質確保促進法」の改正案を議員立法でまとめる方針を確認した。来年の通常国会での提出を視野に政府と調整中。改正法の施行は早ければ来夏になる見通しだ。
国土交通省はまず国が実施する公共工事の入札で、改正案の内容を反映させる方針だ。建設大手50社が国から受注する工事の請負金額は2012年度で約1兆6千億円となり、50社の工事全体の15%を占めた。
国交省は建設会社が入札時に出す作業員のリストから若手の比率を算出し、評価する。対象の職種は入札により異なるが、現場で施工全体を管理する技術者や実際の作業にあたる技能者が主な対象になる見通しだ。若手の比率に年齢などで基準を設け、基準以上を現場に配置すると加点する。高い点数なら入札で有利になる。
若手と熟練技術者が組んで就労する場合も加点の対象とする方向だ。現場での技術継承を後押しする。総務省によると、建設業の就業者で29歳以下は2012年に56万人と5年前から26%減り、全体に占める割合も11%で3ポイント下がった。若年層を雇える業者は当初限られ、工事のコストは上がるとみられるものの、人材の確保を優先する。
地方自治体の事情にも目配りする。公共工事の入札では、事前に国や自治体が作業工程や施工内容の計画を公表する。自治体は公共事業を減らす流れで土木や建設に詳しい専門家の採用を控えてきたため入札計画の作成が滞り、工事全体が進みにくくなっている。
政府・与党は法改正を経て、入札計画の策定や施工管理をゼネコンや建設コンサルタントなど民間に委託する方式を拡大する。東日本大震災の被災地で導入が進む仕組みを全国に広げる。
前例のない高度な技術が必要な工事ではゼネコンなどから提案を募り、価格を相対交渉で決める制度も導入する。現状の入札制度は原則、価格で落札先が決まる。
安倍晋三政権は古くなったインフラの更新や強化を促す方針だ。国土交通省はインフラの維持管理や更新にかかる費用を今後50年間で190兆円と見積もる。橋や水門は建築後50年を超える割合が20年後には5割を超える見通しだ。