お知らせ
「五輪招致史上まれにみる大接戦」といわれた2020年夏季五輪の招致は、東京が56年ぶり2度目の開催を勝ち取った。国内外で先行き不透明要因を抱えて湿りがちの日本の株式市場に明るい材料が飛び込んだ。開催までの7年間にインフラ整備などで建設や不動産などの企業に恩恵をもたらすとの指摘は多い。日本経済全般に好影響が広がれば、デフレ脱却への期待も強まりそうだ。
6日の株式市場では「マドリード有利」との報道を受け五輪関連銘柄に売りが膨らんだ。こうした反動もあり、招致決定を受けた9日の市場ではこれらの銘柄を中心に買いが入る可能性が高い。過去の例をみると先進国では開催決定から開催月まで株価が堅調に推移しても、その後は経済が失速するケースが目立つ。株高の持続には安倍晋三政権が五輪招致を追い風に、構造改革など日本経済の持続的な成長を促す難題にどこまで踏み込めるかが重要になる。
「15年続いたデフレ、縮み志向の経済を、オリンピック開催決定を起爆剤として払拭していきたい」――招致決定を受け安倍首相は五輪開催決定を契機に日本経済の変革を目指す姿勢を明確にした。開催に向けインフラ整備や観光など幅広い分野に好影響が波及するとの期待は市場にも広がる。前回の五輪開催からほぼ50年が経過し、老朽化した道路や橋など多くのインフラに更新や補強に伴う需要が高まるためだ。
東京都の試算によると五輪開催が国内経済に与える波及効果は13年9月から20年9月までで約3兆円。このうち4745億円を建設業が占める。規模は限定的だが、試算は選手村の整備・建設や会場の建設、更新など直接的な需要にとどまる。道路や鉄道を含むインフラ整備費は除外されている。
国土交通省が3月にまとめた「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置」では20年後に道路や橋の約65%、水門など河川管理施設の62%、港湾岩壁の約56%、トンネルの約45%が建設後50年以上経過すると指摘。インフラ管理の総点検を実施し、必要な修繕を速やかに進める考えを示した。オリンピックに向けこうした施設の更新が加速すれば、試算以上の経済効果につながる公算が大きい。